櫻桃庵はわが弊屋のことです。小さな庭に植えた苗木がいつの間にか大きくなりました。俳句や本や映画や友達のことなんかをぽつぽつ書く日記です。 2007年から2010年までmixiに引っ越していたため更新できておりませんでしたが、此方も少しずつ書いていきます。

2007年4月28日土曜日

映画 「幕末太陽傳」

久しぶりにビデオを引っ張り出して観ました。
もう50年も前の映画です。
世の中は石原慎太郎の小説からブームになった「太陽族」が跋扈していたらしく、フランキー堺が主役であるにもかかわらず、裕次郎、二谷英明、小林明などの当時のイケメンをちょっと出してタイトルに「太陽傳」と冠してしまうというトホホな題名です。
太陽族が無軌道な若者の代名詞でもあった時代ですから、喜劇のタイトルとしては逆にアバンギャルドで反体制だったのかもしれません。

内容はすばらしい。
居残り佐平次、品川心中、お見立て、三枚起請、五人廻しといった廓噺をつなぎ合わせてコミカルでちょっと乾いたシナリオとなっています。川島雄三監督、今村昌平助監督というのは渋いです。

主役のフランキー堺扮する「居残り佐平次」わざと勘定を踏み倒し廓に住み込むことが生業の男。飄々と廓の世界を泳ぎ回っているように見えますが、肺病病みで世間をシニカルな視点で眺めています。高杉晋作役の裕次郎に斬られそうになりながら、「首が飛んでも動いてみせまさァ」といってするっと消えていくラストシーンは戦後のバイタリティと退廃が同居しています。

<脇役陣>
金子信夫、山岡久乃の楼主夫妻は先日観た「さくらん」の石橋蓮次、夏木マリと同じハマリ役ですがやはり上をいっています。
岡田真澄はきれいな若い衆で女郎が生んだ外人の子という設定で、金子信夫の楼主に「おまえなんか陰間茶屋に売っちまうぞ」といわれておびえる風情が本当にリアルです。
南田洋子、左幸子のキャットファイトも「さくらん」の土屋アンナのとび蹴りより迫力あります。
特筆すべきは尊敬する小沢昭一演ずる「貸し本屋の金ちゃん」怪演です。
このビデオを貸した角之進さんによると、途中で出てくる「伸びをする犬」が最大の役者であるとおっしゃっていました。さすが「木を見て森を見ない」と自称されるだけある観察眼です。
わたしは金ちゃんが身投げしそこなって川から掴みあげた猫の冥福を祈りたいところです。

「さくらん」をみてぴんとこなかった方も含め、若い映画ファンにはぜひ見てもらいたい映画です。

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